人生を少し豊かにする酒屋の話

酒政 中島酒店のしんさんです。
皆さんは、日本酒が好きですか?
それとも、あまり飲まないお酒でしょうか。
「日本酒はちょっと苦手なんです」
酒屋をやっていると、そんな声を耳にすることがあります。
なかには、「昔、飲んだことがあるけれど、美味しいと思わなかった」という方もいらっしゃいます。
でも、私はそんな方にこそ、もう一度、日本酒を試してみてほしいと思っています。
なぜなら、最初に出会った日本酒が、その人にとっての日本酒のすべてではないからです。
■ 最初に飲んだ日本酒が、その後の印象を決めることもある
皆さんにも、そんな経験はありませんか?
初めて食べたときは苦手だったものが、何年かたって食べてみると、意外に美味しく感じられた。
あるいは、誰かに勧められて食べてみたら、それまでの印象がガラッと変わった。
日本酒も、それに似たところがあると思うのです。
実は、私の若い頃は日本酒が、そんなに好きではありませんでした。
美味しいと思わなかったのです。
ところが、ある蔵元の大吟醸酒が賞をとったので、そのお披露目会があったんです。
そこで飲んだ大吟醸酒が私の日本酒への感覚を根底からひっくり返されました。
今までの日本酒は日本酒ではなかったと思うほどに、印象が良くなりました。
たった一杯のお酒との出会いが、それまでの日本酒に対する考え方を変えてしまったのです。
私の経験からも、最初に飲んだ一杯が自分の好みに合わなかったので、「日本酒は美味しくない」と思ってしまうのは、少しもったいない気がします。
日本酒には、すっきりと軽やかなものもあれば、果物のような香りが楽しめるもの、米の旨味をじっくり味わえるものもあります。
甘口もあれば辛口もあり、同じ日本酒でも、味わいはさまざまです。
もちろん、無理に好きになる必要はありませんよ。
ただ、もし日本酒に苦手意識があるなら、まだ自分に合う一本に出会っていないだけなのかもしれませんからね。
■ 誰と飲むかで、お酒の味わいも変わる?
私は、お酒というものは、単純に味だけで評価できるものではないと思っています。
例えば、気の合う友人と楽しく飲んだお酒。
家族と食卓を囲みながら飲んだお酒。
あるいは、仕事を終えて、ほっと一息ついたときに飲んだ一杯。
そんなときのお酒は、いつも以上に美味しく感じられることがあります。
流石に今の時代は少なくなりましたが、昔は田舎のお祭りの時には、「お前、俺の酒が飲めんのか!」なんて言われて先輩から無理やりコップ酒を飲まされることがありました。
これがきっかけで日本酒が嫌いになったなんてこともよくあったんですよ。悲しいことに・・・・
こんな嫌で苦しい思いをしながら飲んだりすれば、どんなに美味しいお酒でも、いい印象にはなりませんよね。
どんなことでもファーストコンタクトって大事です。
初めて日本酒を飲んだとき、どんなお酒を、誰と、どんな場面で飲んだのか。
そうした経験も、日本酒に対する印象に関わっているように思いますね。
だからこそ、初めて日本酒を飲む方には、ぜひ楽しい時間のなかで、その一杯を味わっていただきたいですね。
■ 日本酒は、もっと気軽に楽しんでいい
「日本酒は難しそう」
「どれを選べばいいのかわからない」
「辛口とか甘口とか言われても、よくわからない」
そんな声も聞きます。
確かに、日本酒にはさまざまな種類があり、専門的な言葉もたくさんあります。
でも、最初から詳しくなる必要なんてありません。
まずは、自分が美味しいと思えるお酒を見つけること。
それだけで十分です。
例えば、普段ワインを飲んでいる方なら、香りの華やかな日本酒を試してみる。
甘いお酒が好きな方なら、甘みを感じられるタイプを選んでみる。
すっきりした飲み口が好きなら、軽やかな味わいのものを探してみる。
そんな選び方でもいいじゃないですかね。
「日本酒は初めてなんです」
そう言っていただければ、酒屋さん側も案内しやすくなりますので、難しく考えず気軽に相談していただけたらうれしいですね。
■ 温度や料理を変えると、違った美味しさに出会える
日本酒の面白いところは、飲む温度によっても味わいが変わることです。
冷やして飲むと、すっきりとした印象になるお酒があります。
少し温度を上げることで、米の旨味やふくらみが感じられるお酒もあります。
そして、料理との組み合わせも楽しみのひとつなんです。
刺身や焼き魚と合わせるのもいいですし、普段の家庭料理と一緒に楽しむのもいいでしょう。
特別な料理を用意しなくても、いつもの食卓に日本酒を一本加えてみる。
それだけで、食事の時間が少し違ったものになるかもしれません。
もちろん、すべての日本酒が、どんな温度でも美味しいというわけではありません。
だからこそ、自分の好みのお酒を見つけながら、温度や料理との組み合わせも試してみてほしいと思います。
缶ビールのように、プシュッと開けてグビッと飲む手軽さとは少し違いますが、料理と一緒にゆっくり味わう日本酒も、なかなか趣があっていいもんですよ。
■ 日本酒を好きになるきっかけは、案外小さなことかもしれない
日本酒を好きになるために、特別な知識は必要ありません。
高級なお酒から始める必要もありません。
まずは少量から、自分が美味しそうだと思った一本を試してみる。
そして、「これは好きだな」「こっちは少し苦手だな」と、自分の感覚を大切にする。
そんな楽しみ方でいいのだと思います。
私は、酒屋の役割は、ただお酒を売ることではなく、お客様の好みを聞きながら、その人が求めている一本を一緒に探すことだと思っています。まだ知らなかった美味しさに出会うお手伝いができたら、それが何よりうれしいですね。
お客様が、これまで知らなかった美味しさに出会うお手伝いをすることも、大切な仕事のひとつだと思っています。
今まで日本酒を飲んだことがない方にも、苦手だと思っている方にも、いつか「日本酒って、こんなに美味しいんだ」と感じていただけたら、うれしいですね。
皆さんにとって、日本酒を好きになったきっかけは何でしたか?
初めて飲んだ日本酒でしょうか。
誰かに勧められた一杯でしょうか。
それとも、料理と一緒に飲んだときでしょうか。
よろしければ、皆さんのエピソードも聞かせてください。
新しい一本との出会いが、皆さんの食卓や暮らしを、ほんの少し豊かにしてくれますように。
酒政 中島酒店のしんさんでした。
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